蜜林檎 *Ⅰ*
その光景に驚く、あやめ。

「そうか、お酒・・・」

「この子、実家は居酒屋なのに
 ほんと、お酒が駄目なのよ
  
 大丈夫、アン?
 我慢しないで吐いちゃった方
 が楽になるよ
 
 胸のボタン開けるよ」

鏡子は、鞄の中からハンカチを
取り出して、杏の汗を拭いて
あげていた。

声にならない声で、杏は
御礼を言う。

「あ・り・がとう・・・・」

しばらくの間、化粧室の端
壁にもたれて、目を閉じていた
杏の吐き気が治まってきた。  

「吐き気は治まったみたいね
 大丈夫そうなら
 外に出た方がいいわ
 ここは狭いし空気も悪いもの
  
 私、店員さんに聞いてみるわ
 どこかで休めないか・・・」

鏡子は、店員の元へと走る。
 
「もう少し
 こうしてたら治るから・・」
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