蜜林檎 *Ⅰ*
樹は杏を抱きかかえたまま
店長に案内してもらい
従業員室へ運び、ソファーに
彼女をそっと下ろした。
 
そして、横になる杏に
優しく声をかけた。

「目を閉じて、もう少し
 横になっていた方がいいよ
 
 後は、任せてもいいかな?」

「はい・・・・」

瑠璃子やあやめを見つめる樹の
視線が、杏の事を宜しく頼むと
訴えかけている。
 
樹の咄嗟の行動を見ても、彼が
心から杏を大切にしている事が
分かり、二人は、とても嬉しく
思うのだった。

「ありがとう・・・
 ございます」

樹は、何事もなかったように
部屋から出て行く。

森永は、瞬時に気転を利かせ
その場に居たファンや関係者
の人に誤解が無いように話す。

「イッキは昔からファンを
 とても大切にしているので
 気分が悪くなった彼女の事
 を、偶然聞いて放っておけ
 なかったんでしょう
 ・・・」
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