蜜林檎 *Ⅰ*
「昔もライブ中に最前列で
 気分が悪くなったファンの
 手を引いて、抱き上げて
 舞台側から連れ出して
 あげた事もありました」

その出来事を思い出した鏡子は
森永に助け舟を出す。

「そういう事あったわね・・・
 デビューしたばかりの頃に」

その言葉に、みんなは
納得をするのだった。
 
森永はつい安心して、深い吐息
をもらしてしまう。
 
鏡子は、その吐息に樹と杏の
関係を感じ取るのだった。

杏はソファーに横になり
瞳を閉じた。

「アン、アン、起きて」

杏は、そのまま眠ってしまった
ようで目を覚ます。

「わたし、眠ってた
 ・・・ごめんね」

「そろそろ、打ち上げも
 お開きだからホテルに戻ろう
 
 アヤメちゃんがタクシーを
 捕まえて待ってくれてるから
 歩けるかな?」
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