蜜林檎 *Ⅰ*
「ムリだよ、わたしは
 仕事してるんだもの」

「仕事って
 たかが、バイトだろう
 この際
 やめてもいいんじゃないか」

雅也のその無責任な言葉に
杏は、腹が立ち怒る。

「そんな、勝手な事
 言わないでよ
 やっと、仕事にも慣れてきて
 楽しくなってきたんだから
 
 一人で任されている仕事も
 たくさんあるのよ」

険悪なムードの中、百合が
話し出す。

「お父さん、アンの気持ちも
 考えてあげなくちゃ・・・
 
 私なら大丈夫よ、ナナの時
 だって休まずに、仕事は
 続けてたんだから」

「ユリ、駄目だよ
 お医者さんに言われただろう
 このまま立ち仕事を続けると
 流産する可能性がある
  
 高年齢出産は、何が起こるか
 わからないと・・・
 
 親父さん、俺が、ユリの分も
 がんばりますから」
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