蜜林檎 *Ⅰ*
本当は、今すぐ

貴方に逢いたい・・・と

最後の一行に記したかった杏
だったが、そんな我侭は
言えない。
 
芸能人とつきあう以上、彼の
スケジュール等に合わせる事
が大切で、スキャンダルは
御法度なのだ。

人の目を盗んで

逢わなければならない・・・
 
それは、まるで愛人のよう

・・・まるで母のよう。

眠れない夜、長い時間と静寂
が杏の精神を掻き乱していく。
 
杏は、鏡に映る自分を

じっと見つめていた。

そして、こんな深夜に
メールで送信するような
内容では無かったと

深く反省して

電気を消して

ベッドの中

布団を深く被る。
< 196 / 337 >

この作品をシェア

pagetop