蜜林檎 *Ⅰ*
しばらくすると、杏の
携帯電話が鳴る。

その着信音は、静まる
家中に響き渡る。

慌てて、携帯に出ると

耳に、囁くように優しい

愛しい人の声が聞こえた。

「杏ちゃん・・・」

杏は、その声に胸が詰まる。

「イツキ・・・逢いたいよ」

「今から逢おう
 
 どこに行けば逢える」

「いいの?」

「タクシーであの川辺まで
 行くよ、着いたら連絡する」

「イツキ、ありがとう」

杏は髪を梳かし、簡単な洋服に
着替えた後、マナーモードに
設定した携帯電話をしっかりと
両手で握り締めて

イツキからの連絡を待っている
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