蜜林檎 *Ⅰ*
杏は、その場に立ち止まる。

「あの出来事以上の何かを
 望んだとしても、絶対に
 無理だよ
   
 それに、このチケット
 もったいなくて使えるわけ
 ないよ
   
 切りとる部分、全てイツキが
 触れてるんだもん
   
 このまま一生、家宝として
 大切に保管しておきます」

「でも、どうどうと女の人と
 遅れてくるあたり
 ほんとイツキらしいね

 あっぱれ、大物」

「ほんと

 元気になって良かったね」

自転車に乗り帰って行く瑠璃子
と別れ、一人で少し歩いた杏は
家に着く。

お店の、のれんは外されていて
薄暗い電気が点いている

杏は、裏手に周り家の玄関の
ドアを開けた。
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