蜜林檎 *Ⅰ*
その手に

そっと、触れた彼女を

彼は、舞台へと誘う。
 
そして、彼女は彼の胸に
抱かれた。

樹の胸に、青ざめた頬を
寄せる百合・・・

百合の瞳に、涙が溢れた。

「ユリ、探したよ
 こんな所に居たのか
 ・・上着も着ないで
 風邪引くぞ」

心配して駆け寄る真の姿に
百合は我に返り、サッと
涙を拭う。
 
「シンちゃん、ごめんなさい
 なんだか寝付けなくて」

杏は、マンションの部屋の前

戸惑っている・・・

何故なら今まさに、樹の部屋
の扉が開かれようとしていた

「どうぞ、入って・・・」

杏は、緊張で心拍数が
どんどん上昇して行く。
 
樹に手を引かれ

彼の部屋へ・・・
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