蜜林檎 *Ⅰ*
「俺は、どこにも行かないよ
 君とずっと一緒にいたい」

その言葉は、紛れもなく
樹の本心だった。

彼自身、杏と出会ってからの
自分に一番戸惑っている。

恋愛に本気になる事は

もう二度と無い・・・
 
そう思い

今まで生きて来た。

適当に、言い寄ってくる女性
と関係を持ち

他人事のように、それを
見つめていた。

彼女達はみんな、樹に
真剣な想いの全てを
打ち明けてくれたが

彼だけは、決して誰にも
本心を見せる事は無かった。
 
自分から離れて行く女性を
決して追わなかった。
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