蜜林檎 *Ⅰ*
幼少期に家を出て行く
母を追いかけずに

冷めた目で見つめていた
あの時のように・・・

そんな樹が、たった一人・・・

過去に追いかけた女性がいた。

『俺と貴女は同じ傷を持つ
 ・・・泣かないで
 俺がユリ、貴女を守るから』

彼女の為なら、夢や名誉の
全てを投げ打っても
構わないとさえ思った。

それ程までに大切な彼女を
樹は、守ってあげる事が
できなかった。

掴んだ彼女の手を

最後の最後に解いてしまった。

酷く、酷く・・・

傷つけてしまった。

そう、その女性とは

杏の姉、百合・・・
 
百合への想いが

彼を、もっと孤独にさせた。
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