蜜林檎 *Ⅰ*
クローゼットを開けて服を選び
クリーニングされたスーツに
シャツを取り出し、ベッドに
置く。
 
そして、裸身の上に白いシャツ
を纏い手元を見つめてボタンを
上から順番にかけていく。
 
そんな樹に、朝の光が優しく
差し込むと、白いシャツから
彼の関節を曲げた腕が
透けてみえ

その美しい曲線からは
色気が漂い

杏はまた、その腕に強く
抱きしめられたいと
思うのだった。
 
着替える樹の、ほんの些細な
視線の動き、手の動きに

杏は、心を奪われ
魅入ってしまう。

支度の整った樹と杏は
二人一緒に部屋を出る。
 
会話をせず、他人を装えば
怪しまれる事は無い。
 
エレベーターを待つ間

ドアに移るサングラスをした
樹を見つめる杏。
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