蜜林檎 *Ⅰ*
杏は、姉の真剣な表情と
言葉に少し動揺する。
 
「うん、分かった」

「お昼、食べるでしょう
 ・・・座って」

百合と杏は、買出しの帰りに
喫茶店に寄る。
 
アイスティーに、口をつけずに
ストローでグラスの氷を
かき回す百合

杏は、黙ったままの百合が
話し出すのを待っていた。

「わたし、昨日、アンが
 男の人と会っているところを
 見てしまったの」

杏は、飲もうとしたグラスを
テーブルに置き、顔色を変える

「昨夜、寝付けずにいたら
 廊下を走る足音が聞えて
 気になった私は、部屋を出た

 そしたら、アンが慌てて家を
 飛び出す所で、尋常じゃない
 様子に、つい、後をつけて
 しまったの、ごめんなさい」

「そうだったんだ、私
 全く気がつかなかった」
< 218 / 337 >

この作品をシェア

pagetop