蜜林檎 *Ⅰ*
「うん、お姉ちゃんやお父さん
 には、まだ話せる状態じゃ
 ないから、うまくごまかせた
 と思うけど・・・
 最近、嘘をつく事が増えて
 ・・・・・・」

杏の声は、沈んでいた。

「アン、今はしかたないよ・・
 本当の事は、話せないもの
 でも、いつか全てを話せる時
 がくるよ
 おじさんも、お姉さんも
 びっくりするだろうけどね」

樹は取材の後、久しぶりに
会った編集者の人に誘われて
朔夜も連れ立って飲みに
出かけた。
 
その行きつけの飲み屋には
もう既に何人かが、彼に
呼び出されて飲んでいた。

その中に、まりあの姿があった

まりあはグラスを置き
樹の元へ駆け寄る。

「イッキ、やっと逢えた」

お酒に酔った、まりあは
樹の肩に腕を回して抱きついた

その姿に、周囲は驚いている。

「マリア・・・」

「逢いたかった」
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