蜜林檎 *Ⅰ*
樹に抱きついたまま、耳元で
そう囁く、まりあの声は本気
だった。
 
その状況を見かねた朔夜が
声をかける。

「マリア
 もう酔ってるのか・・・?」

「サクちゃん・・・」

マリアは、今度は
朔夜にも抱きつくのだった。

「そうだ
 この間の大阪のライブ
 大成功だったって
 キョウコに聞いたよ・・・
   
 仕事で行けなかったのが残念
 私も打ち上げ
 参加したかったなぁ
 盛り上がったんでしょう?」
 
「まあ、でも偉い人とかも
 来てたからね」

「そう・・あっ、聞いたよ
 アンズちゃんがリキュール
 入りのデザートを食べて
 女性用の化粧室に倒れてた
 ところを
 イッキったら躊躇せずに
 入って行って抱き上げて
 部屋まで、運んで
 あげたらしいじゃない?
 あいかわらず、優しいわね」
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