蜜林檎 *Ⅰ*
樹は二人が姉妹であると

思い当たる節を
 
指折り数えていく。

杏の家は、あの川辺の近く・・
 
そう、居酒屋『青月』も

あの近くにある。

杏は、姉の変わりに父親の仕事
を手伝っている。
 
ひとつ、ふたつ・・・

数えていく中で

樹はふと、ある少女の事を
思い出した。

樹の歌を聞きながら・・・

少女は眠る。

忘れていた記憶・・・

「ユリには確か、歳の離れた
 母親違いの妹がいたよ
 
 付き合い始めた頃、ユリは
 小さな妹を連れて
 デートに来てた・・・
 あの小さな、あの子が杏」
 
「俺も、思い出した
 店に早く顔を出した時は
 必ず一番奥の座敷で
 絵を描いてた

 赤い林檎の絵」
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