蜜林檎 *Ⅰ*
雅也に、二人の関係を報告した
後から、彼が気を利かせた為に
少女は付いて来なくなった。 

樹は、黙ったまま大きく
息を吐く。

「イッキ、大丈夫?
 
 顔色が悪いよ」

「大丈夫だよ・・・
 今、頭の中は混乱してるけど
 じきに治まるよ」

今宵の二人は、酒に酔えない
まま、時間だけが過ぎていく。

樹が、ぼそっと呟いた。

「ユリ、今・・・
 妊娠してるらしい」

「本当に・・・
 ユリちゃん
 結婚してたんだね
 
 確か、イッキと別れる頃に
 精神科に通う事になるだろう
 って親父さんが話してた」

樹は手に持つグラスのお酒を
勢いよく飲み干してテーブル
に置いた。

深夜に、樹の家のドアホーンが
鳴り響く。
 
モニターには、千里の姿が映る。
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