蜜林檎 *Ⅰ*
「勝手なことを言ってる事は
 分かっている
 別れなくちゃいけないことも
 頭ではわかってるんだ
 俺が、ユリにしたことを思う
 と・・・・・・」

昔の古傷に、また支配されて
行く樹の肩に、強く手を乗せた
朔夜。

「イッキ、それは違うよ
 
 あの頃のユリちゃんは
 いろんなことがあって
 イッキを最後まで信じること
 ができなくなっていたんだよ
 
 イッキはちゃんと
 ユリちゃんと精一杯
 向き合っていたと俺たちは
 思うよ」
 
テーブルに置かれた樹の煙草を
手に持つ千里。
  
「一本、もらうぞ」

彼は、やめていた煙草に火を
付けて一服する。

「あの頃は、仕事もすごく
 忙しかったし、会社の方針で
 売れる為には何でもやらされた
 音楽以外の事も・・・」
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