蜜林檎 *Ⅰ*
樹の留守に一人きりの百合・・
   
そこへ電話の呼び出し音が
鳴り響くと百合はビクッと肩を
震わせ、ハサミを床に置き
耳を塞いだ。

留守番電話に切り替わる。

『・・・メッセージをどうぞ
 ・・・ピー』

そこから聞こえてくる声・・・

「イツキは今、私と一緒に
 居るわ
 イツキはわたしのもの・・・
 あんたなんか愛していない」

樹の留守に必ずといっていい程
かかってくる電話からは、樹に
対する熱い思い・・・
 
百合に対する中傷的な言葉を
吐く見知らぬ女性の声がした。
 
そして、百合の心は不安で
いっぱいになり、樹を
信じる事ができなくなる。

百合は、どんどん樹を疑って
しまう考えを振り切るために
首を左右に振る。

「違う・・・
 イッキはレコーディング
 だもの・・・でも・・・」
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