蜜林檎 *Ⅰ*
信じたい気持ちと

疑いの気持ちで
 
百合の心は、どんどん
壊れていく。
 
その女性の声を、百合は
消去した後

床に置かれたままの手紙
そして、ハサミを見つめた。

「あんたなんか
 
 愛していない」

樹に愛されていない・・・

また一人きり・・・

彼女は、その刃を自分に向けた

手紙を切り刻むように・・・

ハサミが床に落ちる音が響く。

その時、百合の心は壊れた。

今にも雨が降り出しそうな
夕方の空。

雅也から連絡をもらった樹と
朔夜はレコーディングを抜け
百合の元へと病棟を急いで
駆けていく。
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