蜜林檎 *Ⅰ*
病室のドアの前で、目頭を
押さえる雅也の姿があった。

最近、めっきり店に顔を出す事
がなくなった百合を心配して
雅也は手料理を持って、樹の家
へ向かう。

オートロックのマンション内へ
入る住人に明るく挨拶をして
一緒に中へ入らせてもらい
樹の部屋のドアを叩くが
応答は無い。
 
ドアノブに料理をかけて帰ろう
としたその時、鍵が開いてる事
に気がついた雅也が、中へ入る
とキッチンの床に倒れる百合が
いた。
 
百合の左手首から、血が流れて
いる。
 
雅也は百合の呼吸を確認し
手拭用のタオルで、とりあえず
傷口を圧迫し、救急車を避けて
車で病院へ運んだ。

足元に落ちていた
一通の手紙を手に持って。

樹に雅也が差し出した
その手紙には、百合への
中傷の言葉が並ぶ。
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