蜜林檎 *Ⅰ*
樹の瞳から、涙が零れた。

瞳を開けた百合は
小さな声で彼の名を呼ぶ。
 
「イッキ」

樹は、彼女の胸に深く頭
をしな垂れた。
 
百合に、合わせる顔が無い。

樹の髪に触れ、百合は
自分のしてしまった事を 

深く・・・深く・・・

反省する。

「ごめん・・・なさい・・・」
 
樹も又、忙しさに感けて
百合への配慮が足りなかった
事を反省するのだったが
 
全ては・・・もう遅い。

病院を退院する日。

雅也と樹は、二人だけで
話をしている。

「そうだったのか
 スタッフの・・・
 お前のスケジュールを知って
 いる身近な人間の仕業だろう
 とは思ったが、それはまた
 厄介な話だな」
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