蜜林檎 *Ⅰ*
「彼女には、ユリも何度か
 会った事があるので
 手紙を送り、悪戯電話をして
 きた人物は、俺の熱狂的な
 ファンだったと、ユリには
 伝えています
 
 ユリの心をこれ以上
 傷つけたくない」

雲ひとつ無い、晴れ渡った
青空を見上げることなく
顔を曇らせる雅也。

三人は病院を出て、車が停車
している場所へと向かう。

百合の足が止まる。
 
「イッキ
 話したい事があるの」

立ち止まり、振り返る樹。

「先に車に行ってるな・・・」

百合にそう告げて、雅也は
車へ向かう。
 
その手には、百合の退院の
荷物を持って・・・
 
百合の左手には、包帯が
巻かれている。
 
樹は、その包帯の下の

傷跡に誓う。
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