蜜林檎 *Ⅰ*
「ユリ
 俺も大事な話があるんだ
 百合、俺と結婚しよう」

樹はポケットから指輪を
取り出し、彼女に渡した。
 
百合は樹の言葉に驚き
涙が溢れた。

「夕食の時に話そうと
 思っていたけど
 ユリに、早く伝えたくて
 病院の前でプロポーズ
 なんて・・・」

「ごめんなさい・・・
 わたし、イッキとは
 結婚できない」

結婚できないという返答に
驚いた樹の手に指輪を返した
百合は、話を続けた。

「・・・ユリ?」

「わたしと別れてください
 お願いします」

「ユリ、本気なのか」

百合は、心が張り裂けそうに
痛む中、涙を堪え

樹に最初で最後の嘘をつく。
 
「わたし、もう疲れたの・・・
 今の私は
 もう貴方を好きじゃない
 お父さんと実家に帰ります
 わたしの荷物は全部
 捨ててください」
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