蜜林檎 *Ⅰ*
そこへ雅也の車が停車する。

「ユリ、ちゃんと話そう
 これからの事」

百合の手を掴む、樹の手を
振り払い、百合は助手席に
乗り込んで、ドアを閉めた。

助手席のドアを叩く、樹。

百合は彼の方を一度も見ること
なく、ただ足元を見つめている

「ユリ、お願いだ・・・
 聞いてくれ」

運転席から降りて来た雅也が
樹に声をかける。

「イッキ・・・」

「親父さん、お願いです
 ユリは必ず俺が幸せにします
 百合が望むなら、音楽を
 辞めても構わない
 
 だから、百合を連れて
 行かないでください」

雅也は、樹の頬を力強く殴った
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