蜜林檎 *Ⅰ*
「その服、綺麗な色だね」

杏の隣に座った樹は、洋服と
同じ色だと青い空を指差して
みせた。

杏は、彼の指の先に広がる
澄み切った空を見つめる。

「本当、きれい」

そして樹に微笑みかける
いつもの杏に戻る。

「やっと・・・目が合った」

樹は杏の頬に手を翳し
 
口づけを交わす。

「そうだ、イツキ・・・
 遅くなってしまったけど
 誕生日のお祝いしよう
 二人だけで・・・駄目?」

「嬉しいよ」 

杏と樹、二人は手を繋いで
並んで街を歩く。
  
杏は、前後左右を見渡す。

そして人の気配を感じた杏は
彼の手を解き、彼と距離を
取ろうとした。

「杏、大丈夫だよ」
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