蜜林檎 *Ⅰ*
樹は、その手を解けないように
強く繋いだ。

「こんな時間に俺が、ここに
 いる事自体、珍しい事なのに
 誰も俺だって気づかないよ」

「気づくよ・・・
 ファンなら絶対
 イツキだって分かる」

「テレビやステージの上と
 普段の俺じゃ違うでしょう」
  
杏は樹の顔をじっと見つめて
はっきりという。

「違わないよ
 
 オーラで分かるもん」

「オーラって・・・」

樹は、真剣にそう話す杏を
見て微笑む。

「じゃあ、気づかれてもいい
 行こう」

二人は、駅近くのスーパーで
夕食の買い物をする。

「何が食べたい・・・
 なんでもいいは駄目だよ
 イツキのお祝いなんだから」
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