蜜林檎 *Ⅰ*
樹は少し考えて、店頭で宣伝
されているポップ(POP)に
書かれていた

『今夜はハンバーグ』

という文を
そのまま読んでみせた。  
  
「今夜は・・・ハンバーグ」

杏は、樹の口からハンバーグ
なんて可愛い言葉を聞く事が
できた事実に感動するのだった

ハンバーグの材料と、お酒の
入った買い物袋を樹が手に持ち
ケーキ屋さんの前で杏を待つ。

彼女は手に、花とケーキを持ち
お店から出て来た。
 
そして二人は並んで、来た道を
戻って行く。

手際よく料理をする杏の姿を
樹は見つめる。
 
包丁を手に持つ杏が言う。  

「痛い・・・」

樹は、その声に慌てて
彼女の元へと・・・
 
すると、杏は玉葱をみじん切り
にしながら、涙を流して瞼を
押さえた。
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