蜜林檎 *Ⅰ*
杏は部屋で着替えながら
昔の事を思い出す。
  
背の高い男性が、小さな男の子
の手を繋ぎ、遠く歩いて行く
後姿が見える。

その姿を見つめながら
父、雅也に支えられている
百合の姿。

その光景を見つめる幼い杏。

百合は、涙声で叫ぶ。

「レツ・・・レツ」

烈は、駅まで父親が迎えに来る
と言い、帰ってしまった。

残された三人は、お店を
片付けている。

「ユリちゃん、よかったね
 レツとたくさん話せて
 
 将来は、建築家になりたい
 だなんてすごいね」
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