蜜林檎 *Ⅰ*
「懐かしい味がする・・・
 おいしいよ、とっても」

雅也の顔が浮かぶ

・・・樹は想う。

『俺が今している事は
 許される事じゃない
 
 俺が今、しなくては
 いけない事・・・
 
 それは
 杏をあきらめること』

「イツキ、これも食べてみて
 ・・・・・・」

無邪気に笑う杏は

幸せの中に・・・・・・

「どうしたの、イツキ
 さっきから、ボーっとしてる
 ・・・何か
 心配事でもあるの?」

「ごめん、何でも無いよ
 ・・・なんでもない」

夕食の片づけを終えた杏は
時計を見つめた。
 
時計は、21時半をまわる。
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