蜜林檎 *Ⅰ*
杏から出てきた言葉は全て・・
樹が、間違いであってほしいと
願った事柄

親父さんが父親で・・・

百合が姉・・・

受け入れなくてはいけない事実
が、そこにある。

「私、肝心な事を何も話して
 なかったね
 苗字は、さやま・・・
 佐山 杏」

『俺は、どうすればいい・・』

「イツキ?」

「送って行くよ」

「いいよ、電車で帰るから」

帰る為に立ちあがる杏の手を
握る樹。

「送って行く」

いつもと様子の違う樹に戸惑う
杏は、彼が今、何に悩み
何に囚われているのか。
 
何も知らない・・・

樹はTシャツの上に、シャツを
羽織り、杏の鞄、洋服の入った
ショップバックを持ち
何も話さずに玄関へと移動する
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