蜜林檎 *Ⅰ*
彼女は涙を流して言う。

『母が出て行った後、すぐに
 あの女性(ヒト)が
 この家で暮らすようになった
 
 私を置いて出て行った母への
 憎しみを、私は彼女に
 向けようとした・・・
   
 だけど、彼女は体が弱くて
 ・・・
 私は、言葉を飲み込んだ
 
 吐き出す事のできない言葉は
 私に突き刺さり・・・

 重荷になる
 
 楽しかった過去の思い出に
 縛られていた私だけが
 あの家の中で一人・・・

 浮いていた』

「父がユリちゃんに謝った時
 私は、自分の存在を責めた
 
 姉の母親と姉の悲しみの上に
 自分の幸せがあった
   
 人の不幸を踏み台にして
 私は産まれた・・・」
< 269 / 337 >

この作品をシェア

pagetop