蜜林檎 *Ⅰ*
テーブルを拭きながら
百合は言う。

「慣れるかは別だけどね」

「アイツなら慣れるさ
 でも、勇次の奴は医者だった
 から、てっきりレツも医者に
 なるものだと思っていたがな
 ・・・」

「ユウジさんは、仕事で家庭は
 顧みなかったけれど、昔から
 烈の事をすごい可愛がって
 いたから、きっと烈のしたい
 ようにさせてくれると思うわ
   
 医者にさせたがってたのは
 お義母さんの方だもの」

玄関のドアが開いた音と共に
ナナが店へ駆けてくる足音が
聞こえる。

「ママ、ただいま」

「ただいま」

「シンちゃん、ナナ
 おかえりなさい」

腕をまくり、近寄る真に
雅也は言う。
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