蜜林檎 *Ⅰ*
樹は、ハンドルを握る手を離す

「行けないよ
『二度と来るな』
  
 そう、親父さんに
 言われてるんだ」

「じゃあ、杏ちゃんとは
 別れるんだね、イッキ」

「サクちゃん、その話は・・」

博臣の言葉も聞かずに、朔夜は
酒の力を借りて樹に言いたい事
を述べた。

「親父さんに会えないようじゃ
 アンズちゃんとのこれから
 なんて無いんじゃないの」

「サクちゃん、ここに来る前に
 あんなに飲むから・・・
 悪酔いしずぎ」

「いいんだ、ケイ・・・
 サクちゃんの言うとおりだよ
 行こう」

樹は前だけを見て

車は走り出す。
 
何も話さなくなった朔夜

黙って運転する樹

本気の二人に、圭司と博臣は
何も言えなくなる。
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