蜜林檎 *Ⅰ*
いつもの川辺に車は停車し
四人は車から降りる。
 
昔と変わらない町並みを
眺めている圭司と博臣。
 
地面に腰を下ろす朔夜の傍に
樹が立つ。

「懐かしいね、ここ」

「あの事があってから、一度も
 足を運んでなかったからね」

四人は、遠い過去に

思いを馳せた。

朔夜の隣に座る樹。

「俺は、詩に行き詰まった時に
 よくここに来てるよ
 
 さすがに親父さんの店の方
 には、行けなかったけど」
 
その事を、朔夜は知っていた。
  
「俺は知ったてよ、雑誌記者の
 中野に聞いてたから・・・
 
 中野がまだスクープ撮ってた
 時に、イッキの後を突けたら
 ここで詩を書いてるみたい
 だって教えてくれた」

「中野くん、敵に回すと
 コワイ奴だったね」

やっといつもの四人に戻り
みんなで笑い合う。
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