蜜林檎 *Ⅰ*
好き過ぎて、彼の夢の邪魔
をしたくなくて

百合は樹の手を離し、彼を
突き放した。

百合は想う・・・

今更、心を掻き乱されて
何になる。
 
樹の手を離すと決めたのは
誰でもない百合自身なのだ。
  
自分をしっかりと持ち
落ち着いている病気に
また負ける事の無いように
しなくては・・・絶対に。

『私は、病気のせいで・・・』

百合は、もう二度と
あんな思いだけはしたくない。

「ユリちゃん、今日は私が
 お店に出てもいいよ」

「ううん、今日はお店の方は
 大丈夫よ、平日だから
 常連さんだけだろうし・・・
 そうそう、ずっと言うの
 忘れてたんだけど、この間は
 ごめんなさいね
 
 せっかく、アンの彼が来て
 くれていたのに・・・
 確かお友達と一緒に」

「えっ、どこに?」
< 282 / 337 >

この作品をシェア

pagetop