蜜林檎 *Ⅰ*
樹は、杏の手を強く握りしめる。

「ユリちゃんがお父さんとの間
 に入ってくれるなら心強いね
 きっと大丈夫だと思う
 
 お父さんも話せばちゃんと
 分かってくれるはずだもの」

「親父さんにどんなに反対され
 ても二人の事を認めてもらう
 為に、俺は何度でも、お店に
 足を運ぶよ
 
 杏とずっと
 一緒にいたいから」

「私も、イツキと
 ずっと一緒にいたい」

二人は、お互いの気持ちを
確認し合う。

その傍らで、杏の頭の中は
グルグルと急速に回転している
 
樹が話した言葉の全てを
ちゃんと理解して、整理をして
心に受け止めていく。

樹と百合が付き合っていた
事実を。
 
百合の自殺未遂・・・

二人の別れを。
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