蜜林檎 *Ⅰ*
ホテルのフロントで受付を
済ませる樹を少し離れた場所で
待っている杏の元へ一人の男性
が近づき、声をかけた。

「アン、こんなところで
 何してるの?
 誰かと待ち合わせ」

こんな時に知人に会うなんて
 
罰の悪い顔をして杏は
声のする方を見つめた。
 
そこには見慣れないスーツ姿
の、蒼一が立っていた。

「ソウちゃん・・・
 どうしてここに?」

「俺・・・俺は会社の先輩達
 と最上階のバーでさっきまで
 飲んでたんだ
 今から帰るところだよ
 何?アンも飲んでたの・・」

「・・・・・・」

そこへ、杏の名前を呼ぶ
低い声がした。

「杏、行こうか」

サングラスをしたその声の主は
男の蒼一から見てもかっこいい
と思える程に、すごい存在感が
あり、蒼一は緊張した声で
杏に問いかける。

「・・・アンの彼氏?」 
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