蜜林檎 *Ⅰ*
杏は眠る樹に、小さな声で
そっと告げた。

「イツキ、貴方さえ
 私の傍に居てくれるなら
 私は、他に何も要らないよ」

今度は、杏が眠る樹に
優しいキスをする。
 
翌朝、二人は早めにホテルを
出て、コンビニで買った
サンドイッチを食べながら
車は走る。

杏は、運転する樹に缶珈琲
を渡す。

「ありがとう」

「今日は、晴れて良かったね
 プロモーション撮影って
 どこに行って撮るの?」

樹は、首を傾げた。

「さあ・・・どこだろう?」

「この際、どこでもいいよね
 こんな天気のいい日に
 野外なんて気持ちいいに
 決まってるもの
 仕事なんてしないで、本当
 どこか旅したい気分
 
 いいな、イツキ・・・
 あっ、イツキ仕事だったね」

笑い合う二人を乗せた車は
いつもの川辺に停車してしまう
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