蜜林檎 *Ⅰ*

今でも・・

それから、数日が経つ

・・・金曜の夜。

雅也の店は常連さんと会社帰り
の人達で賑わっている。
 
百合に変わってお店の手伝いを
する杏は、テーブルを拭く
手を止め、店内を見つめる。
 
テーブル席で男女交えて
大盛り上がりの若い人達

カウンターで一人静かに
お酒を飲む中年の男性

仲良くお酒を酌み交わす
夫婦、家族・・・

楽しい、嬉しい

悲しい、忘れたい・・・

いろんな思いを胸に、人々は
酒に酔う。

杏は、このお店に集まる人達を
見つめているのが幼い頃から
好きで一度も父の仕事を嫌だと
感じた事は無かった。
 
確かに小学生の頃に、父の仕事
を答える場面で居酒屋だと言う
と、酒臭いだのと言われた事は
あった。
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