蜜林檎 *Ⅰ*
「好きじゃないって言ったら
 嘘になる
 でも、今の好きは、昔の好き
 とは違う
  
 あの頃は、本当にイッキの事
 が死ぬ程好きだった
 
 わたしの居場所は
 イッキだけだった」

本当の自分の気持ちに、ずっと
蓋をして生きてきた百合。
 
百合の心の叫びに樹だけは
気づき優しく手を差し伸べて
くれた。
 
それなのに、繋いだ手を一方的
に離したのは百合だった。  

その手を離した事を、百合は
後悔していない。

「あの時、あのまま別れずに
 一緒に過ごしていたとしても
 きっといつかは
 別れていたと思うわ
 ・・・今が真実」

「ユリちゃん・・・
 
 もうひとつだけ

 聞いてもいい?」
< 318 / 337 >

この作品をシェア

pagetop