蜜林檎 *Ⅰ*
電話を切った杏は、慌てて
お店へ顔を出す。

「何、お父さん
 こんな時間に大きな声出して
 ・・・」
 
店内には緊迫した空気が流れ
蒼一は困った顔をしていた。

「おまえが付き合っている
 
 相手は、イッキなのか?」

「何・・・

 急に・・・」

驚く杏に、雅也は言う。

「イッキなら
 
 今すぐ別れるんだ」

雅也が、杏と樹の事を

許してくれるはずは無い・・・

その事を、杏は知っていた。
 
「親父さん
 雰囲気が似ていたってだけで
 まさか本人な訳が無いじゃ
 ないですか
 アン、ごめん、調子に乗って
 つい口を滑らせた」

「ううん、いいの
 
 いづれ分かる事だから・・」

「アン・・・」
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