蜜林檎 *Ⅰ*
「つい最近、この近くで
 恋人と逢ってるアンの姿を
 偶然に見かけたの
   
 すぐに相手がイッキだって
 わたしには、わかったわ
 
 二人は真剣に付き合ってるの
 お父さん
 どうか許してあげて」

雅也は、蒼一に悪いが帰って
もらうように話し、蒼一は
慌てて席を立つ。

店の外で杏と話す蒼一。

「なんか、俺のせいでごめん
 
 本当、俺って
 無神経で嫌になるよ」
 
「ソウちゃん
 気にしないでいいよ
 この問題は避けては通れない
 から、話すなら早い方がいい

 せっかく来てくれたのに
 今日はごめんね
 今度ゆっくり事情を話すから
 その時は聞いてね
 
 また、いつでも来てね
 待ってるから」

深呼吸をして杏はドアに手を
翳し静まる店内へと入る。
 
部屋の中へ入って行く
真の後ろ姿。

店内には、家族三人だけ・・・
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