蜜林檎 *Ⅰ*
「ユリ
 おまえはもういいのか?」

「いいも何も、わたしはあの時
 イッキの手を放したの」

「それは
 イッキの為じゃないか」

「違うわ・・・
 イッキの為なんかじゃない
 自分の為よ
 
 一緒に努力することをしない
 で楽な方に私は逃げただけ」

「ユリ、俺は知っている
 イッキと別れた後のおまえの
 深い苦しみを・・・
 そんなおまえの全てを近くで
 見て来た俺は絶対にイッキの
 事を許せそうに無い」

「お父さん、私の事はもう
 ずっと昔の話なのよ
 
 今の私を見て、こうして
 シンちゃんと幸せに
 暮らしているじゃない
 
 もう、過去の話・・・」

雅也は、カウンターの机に

思いきり手を叩きつける。

「過去の話なんかじゃ
 ないだろう

 もういい、この話は終わりだ

 ・・・

 今日はもう風呂に入って寝る
 片付けは明日でいい」
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