蜜林檎 *Ⅰ*
『恋なんて絶対にしない』

そう、言っていた杏が

初めて好きになった人。

「それが、イッキなの
 お願いだから
 ちゃんと二人の話を
 聞いてあげてください」

「お父さん・・・

 お願い・・・」

涙ぐむ杏の顔を、雅也は
見ることができないでいた。
 
「なぜ、姉妹揃って
 
 アイツを好きになるんだ」

「二人とも、それぞれの
 母親に似てるからよ
 
 お父さんを愛したように」

雅也は、ただ黙って

足元を見つめた。

もしも・・・

このまま雅也が

許してくれなかった場合
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