蜜林檎 *Ⅰ*
「だけど、俺は杏と
 ずっと一緒にいたい
 この気持ちは止められない」

「親父さんに許してもらえる
 まで根気よく話し合う
 しかないか
 俺も、何か二人の役に立つ
 事ができればいいんだけど
 ・・・」

「サクちゃんには、いつも
 こうして話を聞いてもらって
 一人で抱え込まなくて
 すんでるよ、ありがとう」

杏、同様・・・

それ以上に、樹の心に

不安な想いが募る。

彼の重く閉じた瞳の奥に

繰り広げられる
  
過去の情景。

それは・・・

あの日・・・

病室のドアの前で

目頭を押さえる雅也の姿
  
その情景は

樹の心を縛りつけ

支配する。
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