蜜林檎 *Ⅰ*
その時、階段を一段踏み外した
杏が落ちそうになる。

「キャー」

階段の下にいたイツキが
咄嗟に、杏を抱き留めた。
 
あまりにも、その光景が
素敵すぎて、みんなは
息を飲んで見惚れる。
 
時が止まる。

「大丈夫?」

優しく声をかける樹の胸に
抱かれる杏。
 
彼女は慌てて樹から離れた。

「ごめんなさい
 ありがとうございます
 私、『moment』の
 大ファ・・・」

樹は、以前のように

また、杏の口を塞いだ。

「行こう」

そう言って、朔夜の手と杏の手
を握ってその場を離れる。
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