蜜林檎 *Ⅰ*
「記念になるかなぁと・・・
 あっ、ドレス返さなきゃ」

困った顔をする杏に
樹は、優しく声をかけた。

「もう少しドライブしてから
 あの建物の前で降ろして
 あげるよ
   
 今はまだ無理だけど
 ごめんね、友達にも
 悪い事しちゃったね」

「でも、君達のおかげで
 助かったよ
 みんな、新曲のプロモの
 撮影だと思ってたみたいだし
 パニックにならなくて
 済んだよ、ありがとう」

「ほんとにありがとう」

憧れの三人に、丁寧に御礼を
言われた杏は戸惑う。

「いえ、こちらこそ
 ドライブまでご一緒させて
 頂いて、すみません」

樹は、微笑む。
 
「君って、いい子だね」

「そんなことありません」

四人は、笑いあう。

< 42 / 337 >

この作品をシェア

pagetop