蜜林檎 *Ⅰ*
「放っておいてください」

「放っとけないでしょう?」

男性が、指をさすとスカート
のファスナーが全開。
 
恥ずかしい杏は、慌てて
ファスナーをしめる途中に
指を挟んでしまう。

「痛ッ」

「かして」

男性は、 ファスナーを
ゆっくりと下げて
挟んだ指をとってくれた。

「血が出てるね
 ちょっと、待ってて」

辺りを見渡した彼は、傍にある
ドラックストアに飛び込む。
 
杏はハンカチで指を抑えている
 
彼は、消毒液と絆創膏を手に
戻って来た。

「指、みせて」

「もう、大丈夫です」

「だめだよ、ほら、かして
 ちょっと沁みるよ」

手をとって、傷口に消毒液を
かけた彼。
< 54 / 337 >

この作品をシェア

pagetop