蜜林檎 *Ⅰ*
「痛い」

「大丈夫?」

頷く杏の指に、絆創膏を
張ってくれた。
 
「はい、これで大丈夫」

「ありがとうございます」

杏は、こんなにも優しい彼に
冷たい態度をとってしまった
自分の行動を恥ずかしく思う。

そこへ、瑠璃子が小走りに
駆け寄る。

「アン、ごめんね
 
 電車、一本
 乗り遅れちゃった」

遅れてきた瑠璃子は、男性と
並ぶ杏の事が気になり

お辞儀をして男性の顔を
見つめた。

「小西、久しぶり、南だよ」
 
瑠璃子は、聞き覚えのある
名前と声に驚く。

「南って、あの
 南蒼一(みなみそういち)」

「そうだよ、久しぶりだな」

 
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