蜜林檎 *Ⅰ*
「ソウちゃん、もういいよ
 昔の話だもの
 あの頃、ソウちゃん
 引っ越しの準備とかで
 忙しい時期だったでしょう
   
 それにお父さんに、新しいの
 買ってもらったしね」

「ほんと、ごめんな」

駅前、帰り道が違う
蒼一と別れる。
 
「楽しい時間をありがとう」

蒼一は、近いうちに、中学の頃
の仲間で集まる機会を作るので
その時は、二人とも参加する
ようにと笑いながら
強制するのだった。

「アン、おやっさんに会いに
 また、近いうちにお店に
 顔出すよ」

「うん、お父さんも喜ぶよ」

「じゃあな、また」

蒼一の後姿を見送った二人は
歩き出す。
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